| 日時 | 2026/1/29 19:00~20:25 |
| ゲスト | 趙 国君 氏(中国人社会活動家、局外人書店 店主)通訳付き |
| 場所 | 神保町ブックハウスカフェ |
| 参加者 | 11名 |
※発言者敬称略
▼冒頭挨拶【柳】
- これまでは老舗企業の話を聞くことが多かったが、第 16 回となる今回は、2023年12月に局外人書店を神保町に開いた中国人社会活動家の趙国君氏をお迎えした。
- 同書店では中国語の書籍や絵本を販売するだけでなく、会員制の図書館として貸出も行なっており、開店当時は大変話題になった。
- 本日は、中国の言論状況や日本に来ようと思った理由、書店を開いてみて感じたこと等についてお話しいただく。
▼ゲストスピーチ【趙】
- 来日して約4年、書店を開いて2年が経つ。北京でも同じような活動をしていたが、書店の運営はしていなかった。サロン的な場が好きで、民主的なテーマを扱いながら、法律・芸術・文化について議論する組織的な活動を行なっていた。
一部の人からは、「民主的な活動家」と呼ばれることもある。 - 今の中国情勢は危険な状況。今日はこういう自由がある場所で皆さんとお話しできることが嬉しい。
- 日本に来てから、中国ではできない活動や、自由な空間で書店を開くことができた。私自身、書店という場所を愛していて、本が豊富にあるこの空間が好き。お客さんを神保町に案内することもしてきた。神保町という土地を愛している方もいれば、本を愛している方もいる。神保町で書店を開くことが、一番素晴らしいことだと思い、この土地を選んだ。
- 書店では、中国語の本を取り扱っている。対象顧客は、日本にいる中華系の方。
最近では、日本人の方も訪れてくれる。中国語が好きだったり、言葉を勉強していたり、中国で生活していたことがある方等が来店するようになった。中でも、大学やメディア関係者が多い。以前知り合った外交官や学者、その関係者が友人を連れてきてくれることもよくある。 - 書店といいながら、最初は売る本がなかった。そのため、開店当時は全て北京から持参した自分の本を置いていた。
- 書店を開いた一番の目的は、文化に関するサロンを開くことだった。活動のテーマは政治や思想的なことが多い。日中の学者関係者が自由な場で議論をしている。
- 二つ目の目的は、言語を学ぶこと。まずは自分が日本語を学ぶことから始めた。現在は、最近来日した中華系の人を対象に、毎週火曜・木曜に日本語教室(20回/一期)を開いている。
中国語と日本語の交流会も毎月行なっており、お互いに言語や文化を学んでいる。この活動を通じて、さらに多くの日本の友人が訪ねてくれるようになった。日本人参加者の方が多いこともある。 - 三つ目の目的は、親子活動。自分にも小学生の子どもが2人いる。私自身もそうだが、来日した中国人家族は教育に関して同じ問題に直面している。そこで、子どもたちに中国語や日本語で絵本を読む活動をしている。日本語教室でも、子どもたちに日本の絵本を読んであげているが、その目的は日本の文化を理解することにある。
- 四つ目の目的は、本の出版。最近、1冊目を出版したところ。日本にいる華僑・華人だけでなく、海外にいる方にも販売している。
- 思想の自由や歴史問題等を扱っている本は、中国国内では出版できない。そのため、日本で出版している。
- 今年は5冊出版予定。中国やアメリカ、ドイツ等の海外に住んでいる華僑の作家にも執筆してもらっている。
これから出版の基地としても機能させていきたい。中国では、本来自由なはずの読書まで制限されている。 - 私たちが重視しているのは、中国人と日本人の交流。一つの大学のような場所として育てていきたい。
- 今、日本に移住してくる中国人が非常に増えてきている。日本政府が外国人への締め付けを強化していることに対しては反対。
- 書店という場所を通じて人と人とを繋げ、分かり合っていきたい。恋愛が成就した事例もあり、それも一つの日中友好の証といえるかもしれない。
- 開店以来、朝日新聞やNHK、共同通信社等、様々なメディアに取り上げてもらった。取材を通じて私たちのことを知ってもらい、地位を確かなものにしていけたら。
- まだ開店して2年。ぜひ、皆さんから関心や応援を寄せていただきたい。
今日は神保町を愛している方々に私たちの存在をより深く知ってもらうことができ、非常に嬉しく思っている。


▼懇談会
- 東京23区内では、中国の方がたくさん住まれている地域があり、公立の小学校でも半分の生徒が中国人というところもある。日本人の母親たちは、仕事や介護等をしながら子育てをしているため、外国の方たちと文化を共有する時間を取ることが難しい。文化共有のために一番良いことがあれば教えてほしい。
→まずは交流してほしい。
→先生もそうだが、時間に余裕のない母親たちが多い。
→ネットに文化を紹介する動画がある。まずはそういうものから見てはどうか。私自身も、子どもの教育は重視している。親子で中国語や日本語で絵本を読む中で学んでいきたい。自分の子どもたちも、日本の小学校で友達から様々なことを学んで帰ってくる。日本人の子どもも同じだと思う。 - 中国の人たちは、見られることに慣れているところがある。英語もそうだが、中国語は発音がはっきりしていて、単語やセンテンスも明瞭。日本では誰かに見られながら発言する機会はあまりない。その辺りが文化的にかなり違うように思う。
→自分の店でも、子どもたち同士で喧嘩になったことはある。交流以外に分かり合える方法はあまりない。衝突も、一つの文化交流だと思っている。 - 書店を神保町に開いた理由は。
→神保町は本の天国だと思っている。読書好きにとって、ここに来なければ見られない本がある。一種のグローバルメッカ。そういう場所は、世界でここだけ。中国にもなくはないが、規模は大きくない。神保町は、古本屋だけではなく、出版社や大学もあるため、文化の全てが揃っている。発信基地として素晴らしいと思ったことから、神保町に書店を開くことにした。
→中国在住時から、神保町のことをそう認識していたのか。何かきっかけがあったのか。
→2016年頃、中国で様々な活動をしていたときに、本に関する取り組みを始めた。その際、岩波書店の方が私たちをもてなしてくれ、その方が北京大学を訪ねた際にも交流を持った。その出会いを通じて、神保町のことを詳しく知るようになった。 - 私自身(趙氏)は、ネットに日本の歴史人物を紹介する動画を60本以上出している。坂本龍馬や福沢諭吉等の政治家を取り上げているが、人気がある。
- 神保町には昔、中国の留学生がたくさんいたことはご存知か。
→法政大学に多くの中国人留学生がいたことは有名。 - 店頭の本は、どのように仕入れているのか。
→当初は書店ではなく、図書館として、文化サロンの場所として私物の本を置いていた。その後、親しい日本の友人が日本語の本を5,000冊以上寄付してくれた。
現在販売している本の仕入れルートは三つある。一つは台湾からの取り寄せ。もう一つは、東京の知人が営む出版社の刊行物。三つ目は、自分たちで出版した本。 - 日本と海外に販売チャンネルを持っているのか。
→販売チャンネルは主に三つある。一つは、店頭での販売や、私たちに連絡を入れていただいての購入。もう一つは、海外の華人や華僑向けの書店への卸し。最も重要なのは、中国在住の方が日本を旅行で訪れた際に、買い求めて持ち帰ってもらっていること。 - お店を道沿いから見ると、手前にもう一部屋見えたが、そこはどういう空間なのか。
→図書館になっている。誰でも入ることができ、有料会員になれば本を借りることもできる。もう一部屋が書店。面積が広いため、卓球をしたり交流会を開いたりする会場としても使われている。 - 中国では具体的にどのような活動をされていたのか。
→組織化した様々な活動をしていたことで当局から注視されていたため、特定の仕事を持つことが難しかった。自分で法律に関する動画を作ったり、議論する場を設けたりすることで収入を得てきた。 - 日本での活動は、中国から監視されることなく自由に行なえるのか。
→可能性は否定できないが、日本政府が中国による監視を認めていない以上、大々的に行なわれることはあり得ない。日本に来てからは安全な生活を送っている。日本は素晴らしい国。 - 今は自由に中国と日本を行き来できるのか。
→できない。中国に戻ることはできても、中国を出国して日本に帰ってくることができない可能性がある。中国にいる高齢の父親に会いに行くことができない。毎日ビデオ通話をするしかないことが、今直面している最も苦しい問題。
→中国では、香港も含めて書店を開くことが非常に難しい。日本文化を紹介することでさえ、一部の人からの強い批判に晒される。 - 北京でサロンを開いていたということだが、警察から監視される危険を冒してまでその活動を行なっていたモチベーションは何だったのか。
→知識を持つ人間としての責任だと思っている。清華大学では法律だけでなく、国の制度についても学んだ。反日的なことも、互いに傷つけ合うことも正しいことではない。日中の交流には、素晴らしいこともたくさんあったはず。関係性が冷え込むことによりダメージを受けるのは、我々一般人。何の罪もないパンダでさえ返された。知識人として、間違っていることは「間違っている」と言わなければならない。 - 日本は、古くは唐の時代から中国文化の大きな影響を受けて成立してきた国。基盤の多くは中国から取り入れたもの。中国文化との共通点や、日本独自だと思う部分はあるか。
→明治維新以降の影響が大きいため、日本ならではの文化になっている部分が多い。日本人の考え方も生活様式も、中国とはかなり異なる。現代においてはどの国でも近代化が進み、文明的な行動が取られている。
自分が一番強く感じる違いは、日本人の素養の高さ。人間同士、あるいは政府と国民との関係にもいえることだが、皆が公平。こういった環境は本当に素晴らしい。中国も日本のようになってくれることを願っている。 - 神保町は、日中関係にとって特別な場所というわけではない。北京では行なえなかった新しい活動を展開する拠点として神保町を選んだということだが、何がそこまで魅力的に映ったのか。
→やはり本が多いということ。 - 中国政府のやり方を問うには神保町だ、というわけではなく、文化人として本の街・神保町が魅力的だったということか。
→そもそも書店は、文化の発信基地。神保町は、文化や本を愛している人が訪れる街。今、私たちの主な収入源は図書館の会員だが、その方々は文化を愛している。 - 趙さんのような発信をする中国の方は大変少ないと思っていたため、驚いた。
→自分と同じような人は、北京には少なくない。 - 北京という政府の監視が一番強い場所でそういう活動ができるのか。
→中国の中でも北京は特別な都市。文化人が一番多く、文化的な活動をするのであれば北京は外せない。共産党の影響も一番強い都市だが、反対に共産党に異を唱える人も一番多い地域。一方で、いわゆる独立分子的な人々もいるため、状況が混沌としがち。 - 文化的な知識人が北京に多いのは、北京大学や清華大学があるためか。
→その通り。 - 同じような活動をしている人が少なくないということだが、どの程度の規模か。
→統計を取ることは難しいが、NPOやNGO、民主的な個人活動家も存在する。金銭的に余裕のある人が多い。 - 今、趙さんが行なっている活動は、これまでは香港の出版社が担っていたのでは。
→香港は、今では大陸とほぼ同じ状態。胡錦濤政権から習近平政権に移った頃から、変わってしまった。
中国が経済的に素晴らしかったのは、より民主的な活動ができた頃で、今は全くそうではない。日中関係ですら冷え込んでしまった。 - 約30年前に北京へ行った際は、書店といえば新華書店くらいしかなかった。5年前に上海の書店を巡る旅をしたが、新華書店も近代的になり、他にも特色のある魅力的な書店が増えた印象を受けた。この5年間でかなり変わってしまったのか。
→ここ5年ほどで耳に入ってきた話は、どれも良くないものばかり。独立系書店が倒産するニュースはとても多い。中国共産党の審査が通った書籍のみ販売できるため、雑誌を置くことができず、グッズやドリンク販売でなんとか経営している。
今ではサロン的な活動も禁止され、政治や文化に関わることは全て制限されている。
多くの人が、海賊版や電子書籍で本を読んでいる。紙の本を買う人が減少していることで、作家がかなりのダメージを受けている。 - 以前中国に行った際は、写真映えする独立系書店が非常に多かった。そういう書店が倒産している話は聞いていたが、審査により本が店頭に並ばなくなってしまったのか。
→制限がより厳しくなり、以前は売れていた本も、今は売れなくなっている。党幹部や党員が買うような習近平氏に関する本は売れるが、値段も高く、一般人は買わない。 - 日本の出版業界は、内容もバラエティ豊富で素晴らしい。敬服の念を覚えるほど。
- 今回、趙さんが出版した本はどのような内容のものか。
→私たちが出版する書籍の著者は、すべて海外の有名な中華系ライター。
内容は、政治や思想等に焦点を当てており、中国国内の様々な社会問題を取り上げたものであることを重視している。単純な芸術書や文学書は選んでいない。
今回出版した本の著者は、海外では非常に人気があるが、中国では出版できない。日本の政治家にも、この作者の本を愛好する方がいる。内容としては、20年かけて日本各地を巡った中で見聞きした思想や文化を紹介したもの。深く掘り下げている部分もあり、扱われている内容も日中の交流や比較等、多岐にわたっている。中国国内の知識層にも非常に人気。出版して10日程だが、かなり売れている。
今後、5冊出版する予定だが、多くの影響が出ると思う。 - 中国では出版できないが日本では出版できる本を、中国の人が持って帰っている状況について、危機管理の観点から問題はないのか。
→基本的には、一般個人が逮捕されることはない。ただ、税関で没収される可能性はある。以前はそれほどチェックしていなかったが、今は、特に国外で購入した本については厳しく確認されているかもしれない。反対に、中国国内から国外に出ていく分には問題ない。 - 日系企業に勤める会社員が逮捕されている事例もある。リスクと情報を共有しておかなければ、赴任や取引を進めるのは難しいのではないか。
→個人的には、今、大陸へ行くことはリスクを伴うと感じている。政治問題に端を発し、最近では一般人もそういう対象になる可能性があるため、気をつけてほしい。私たちが活動をしているのは、お互いに理解し合いたいから。 - 世界中の華僑たちに書籍を販売し、海外在住のライターに書いてもらっているという話だった。告知方法やルートに関してネットワークがあるのか。
→インターネット上のネットワークがある。ルートとしては、Amazonやライター自身が持っているネットワークで販売している。大陸で売ることが一番難しい。今回出版した本もサイン本を作りたかったが、著者が出国できないため、作ることができなかった。 - 出版事業は紙書籍か。
→紙書籍。中国国内での電子版は、あまりにも海賊版が多い。
個人的には、対面での交流が大事だと思っている。サロンも、あまりオンラインでは開催しない。やはり会場へ足を運び、いろいろな人と交流してほしい。
人によっては保守的、時代遅れに見える方法かもしれないが、自分としては譲れない大切なこと。 - 書店をサロンのような形で開いているモデルはあるのか。
→東京で同じような活動をしている友人と互いに学び、協力し合っている。友人はすでに出版事業をしているが、小説等も取り扱っている。
異国の地で出版するということは、自分にとってはとても大事なこと。出版するためには、ISBN(International Standard Book Number:国際標準図書番号)を取得する必要がある。日本の場合は無料で取得できるが、中国では100万円以上かかる。 - 中国国内ではインターネットの利用を制限されていると思うが、電子書籍を見ることにも制約があるか。
→出版時にすでに規制を受けているため、基本的に見る側への制約はない。VPNを使用したり、中国で禁止されているものを読んだりすることはリスクを伴う。 - 日本の電子出版は基本的に読むことができないのか。
→読めるし、読んでいる。 - Google Mapsは更新されていないため、今では使い物にならない。百度地図を使う必要がある。
- 神保町には中華料理店が多いが、お勧めのお店はあるか。
→神保町は日本料理が美味しい。
神保町にある中華料理は、日本人向けにアレンジされているため、本国の味とはかなり異なる。池袋や上野には美味しいガチ中華がたくさんある。中国人が増加しているためか、最近ではますます本場の味に近づいてきている。
→九段下へ行くと、ビャンビャン麺や蘭州牛肉麺が食べられる。 - 習慣の違いや、日本文化で驚いたことはあるか。
→たとえば中国では、運転する際に前の車にきちんと続かず、レーンを超えて走行する車が多い。また、レストランに入る際、入口で待たずに奥まで進んでしまう、話す声が大きい等、習慣の違いはかなりある。 - 北京では政治関係の問題を扱うことが多かったが、今は文化交流・文化理解を重視している。日々の生活の中でお互いの理解を深めたい。
- 第三者からの干渉を受けることなく、自分がやりたい活動をすることができるため、中国にいた頃よりも充実感・幸福感を持ちながら暮らせている。
- YouTubeを通じた人権活動や、望ましくない事柄について「よくない」と主張する活動を行なっている。これは、知識人としての責務。父親としても、書店の店主としても、そういった活動をしっかり行なっていきたい。
▼次回の予定
- 2月はお休み。次回は3月の予定。
