| 日時 | 2025/12/1 13:30~16:00 |
| 場所 | ちよだプラットフォームスクウェア504会議室 |
| 形式 | 関係者によるラウンドテーブル |
| 参加者 | 生貝直人(一橋大学教授) 井村寿人(勁草書房社長) 植村八潮(専修大学教授) 鈴木親彦(群馬県立女子大学准教授) 数藤雅彦(弁護士) 田中英弥(第一法規社長) 長尾洋一郎(講談社 IT戦略企画室 テクノロジーラボ 部長) 西岡千文(京都大学准教授) 橋元博樹(東京大学出版会専務理事) 林和弘(文部科学省科学技術・学術政策研究所上席フェロー) 松田真美(日本電子出版協会会長) 柳与志夫(東京大学特任教授):司会 |
▼趣旨説明(柳)
近年「本の街」神保町への注目度が高くなっている。それに関連して立ち上げた神保町プロジェクトであるが、その一環として去年試行的に行なった出版セミナーの成果を踏まえて、今年7月14日に第1回出版流通セミナーを開催した。その時は一般の方を対象にしたが、今回(第2回)は学術コンテンツ供給源としての専門出版社の直面する問題の今後の在り方に特化した内容にした。専門情報のデジタル化・ネットワーク配信がどうなっていくのか、学術の世界では大きな問題になっている。
今回は問題点の摘出を行いたい。
報告1:専門出版を辿る全般的な状況(植村)
<生産、流通・販売、消費の各側面について>
専門書出版の生産の側面では、「科研費での研究は機関リポジトリ等ですぐオープンにしなければならない」とした学術情報アクセスの方針が気になっている。学内研究費での研究成果はどうするのか。博論などを書籍化してきた大学出版部の仕事にも影響が出るだろう。
困ったことにOAで読めるものでいいと思われていて、大学教授の学術書がOAにされる事例が出てきている。OAによって民間学術出版社の役割が変わる。
これまで民間の学術出版社がやってきたことの意義とは、アカデミックな領域だけではなく、公共的な議論を喚起していることにあるのではないか。
流通では、アマゾンなど新たな販売のプラットフォームは出てきている。しかし雑誌が売れなくなって、今後取次との関係が今までどおりとはいかず、書籍の値段が上がる可能性もある。
消費では、学生数と学科は増えているが、本の売り上げは増えていない。コロナ禍で教科書の販売が増えたが、その後は低迷している。教授陣が個人単位でオンライン用に資料を作り出す一方、教科書出版の方が対応できていない。
学生でスマホしか持ってない人も増えており、わかりやすい解を求める傾向が専門出版の衰退を招いている。
山ほどの本をスキャニングし、本文検索ができるようになったが、その結果、専門書のデジタル図書館ができてしまう、それが一番の問題である。
報告2:世界的動向(生貝)
「学術コンテンツのAI学習データに関わる国際的状況」
昨年海外で大きな論争があった。
イギリスのテイラーアンドフランシスが著者に通告なく、マイクロソフトとの間で刊行学術雑誌のAI学習データ契約を締結。海外の各学術出版社で対応が模索されているが、日本の状況についての議論はほとんど公に見られない。
別分野ではニュース配信プラットフォームと新聞社との交渉・対価問題もここ10年ほど議論されているが、この問題も同じような構造を孕んでいる。
契約におけるロイヤリティやAI生成物の扱いを考えなければならない。
どのようなライセンス戦略を立てるのか、データの提供に対してどう取り組んでいくのか、学術出版社のビジネスモデル、そして公共政策の問題としても考えていく必要がある。
J-Stageなどで取得可能な論文データをどのように考えるかという問題もある。
報告3:OSにおける専門書コンテンツの意義(林)
モノグラフをどのように活かすのか、知識をどのようにDX化していくのか、オープンサイエンスとは社会上の基盤を開くためのもの。研究で得られた知識がDX化しプラットフォーム化する。
論文完成以前の経緯を文章化することによって、論文制作の補助・研究の補助が可能になる。
体系化された知識をAIが取り込む。その後に新たな知識体系を創造する可能性がある。
研究自体がDX化すると、AIが入り、文理融合の観点で進めることができる。
データサイエンスによって学習させることで、AIでそれらの多角的な評価が可能。
AIを使用することの意義はオープンサイエンスや制作の先にある。
短期的には「今のモノグラフが輝くためのビジネスモデルの改変」、長期的には「AIにとっての知識ストックの価値」を考える。本来ロングテール(学術の多様性)に優しいオープンサイエンスを創造すべき。印刷時代の学術出版の現実と現在の流れを比較し、今後の立ち回りを考える。
論点出し
- 出版流通では、2000年代の出版の形はもはやない。
- 出版流通はやるだけ損になっているくらいの事業。
- 実際に不動産収入の方が多い会社も多い。
- 雑誌も書籍も紙のものを流すのは20世紀型の形では厳しくなっている。
<一つ目の問題提起: ビジネスの形として破綻しかけている。>
- 学術情報のオープン化について
- 論文の内容を一般の人でも読めるようになるからこそ専門出版の意味がある。
- 今までの形を変えるなら、どこがどうやってそこの資金を担保するのか
- 学術出版社が耐えきれなくなってくる。今のままでは利益がなくなる。
- 法規関連出版は4割がデジタル。
- 法律は何割くらいあってるという評価ができないため、法律に関しては、生成AI使用は推奨されていない。是か否かで結論づけるしかないから難しい。
- ハルシレーションが簡単に起こるため情報としての信頼性がない。
- AIは編集技術が高い。出版社の技術が生成AIの編集技術と組み合わさるといいなと思う。
> コストカットの実現 - 綺麗事には強みがある。海外のような綺麗事を貫き通す強さも日本には必要。
- 正しい情報をより多く学習させる必要がある。
- AIがどの程度使えるのか
- > 判例を調べてみたが、あるAIでは比較的正しい判決が出てきた一方で、別のAIは大嘘だった。
- 使い方によっては正しい話が出てくる。
- 弁護士でも、不慣れな分野の調査のとっかかりでは使用するかもしれない。
- 学術書の役割は、AIで出てきたもののファクトチェックを行うためのものになるのだろうか。
- 検索方法など以前の形には戻れないため、ハルシネーションをどう少なくしてくのか。
- メディア目線でもAIの影響が大きい
> 0クリック問題。広告収益型のモデルが成り立たない。 - エンドユーザーの動きが、完全に楽な方に向いている。
> 文章消費の流れが変わってきている。 - 今後、出版社は書籍の内容を提供する側としてAI企業に求められ続けられる。
- 出版側からどのようにマネタイズしていきたいのかをAI企業と議論する必要がある。
- AIでの立ち読みの権利とか、、、出版側からの主張が大事
- 本を出すときの二次利用や、その後のデジタル化の権利処理も必要である。
- 紙の本で起こっている問題を電子化でどうにかできているわけではない。
- AIでのマネタイズは難しい、
- アメリカの出版社から60冊くらいの注文があった。生成AIのLLMを作っている会社からの依頼などがくる。
- しかし内情は著作権者や出版社が不利になる提案である。
> 出版社がコンテンツをどう活かしていくのかを考える必要性。
- 大学出版部のOA化は一部ではあるけど、大きな流れにはならなそう。
- 海外からAIにコンテンツを提供してくれという依頼が来る。
- 「使ったものはあらゆる方法で公開する」という旨の契約書が送られてきた。
- > 数年後にAI企業と著作権者の間で板挟みになるから、断ろうと思っている
- そのあたりの問題や対応のスタンダードを作らなければならない。
- 図書館のような利用上の不便がベースになったような場所がデジタル化したり、内部著作物を自由利用になってしまうと大学出版はなおさら売れなくなる。
- オープンアクセスの推進について
- 電子化されている論文だけでなく、今後学術書まで拡大する。
- OAが目的ではなく、そこから質の高い研究を生み出すことが目的である。
- 読者が金を出すのではなく、著者がお金を出す形になっており、質が下がっている。
- 学術書には質の高い編集者が必要であるが、インセンティブが担保されていない。
- これらの対策と価値づくりをしなければならない。
- バックナンバーをOAするのも手間がかかるしお金がかかる。
ディスカッション
- 学術専門出版は自律的に動いてきたわけではない。望まれたものを書籍化してきた。
- 直接出版の方が売れている。
- コストと価値を作っていくために、学術書で論文をどのようにわかりやすくするか。
- 国家のお金を使わないことが大事。<国の政策に抗えなくなるため
- 出版の抱えている問題意識を国単位で共有していくことが大事
> 論点整理を行なってインテリジェンスを構築してから挑む必要はある。 - 国際的な基準も必要 <論点
- 海外出版社との契約はかなりひどい内容になっている。
- 提供した後に責任を取るのは出版社であり、AI運営側は責任を取らない。
- AIにどのような内容をどの程度学習させるのか。
- 編集者の育て方も今難しいところにいる。
- フェイクのようなAIでつくっただけの論文が出てきている。
> ファクトチェックが崩壊し始めている。 - 信頼性の担保したコンテンツを高く売る。
> 信頼性の低いデータがAIで出てきてしまったからこそ、信頼性の高いメタデータが評価されるようになるのではないか。 - 理系の分野ではAIを使用した調査工程を行い、それらをAIにかけて実験を進め、AIに論文を書かせる、という完全AIフローで論文を制作する流れもある。
- 大学出版と学術出版が共生していくために、商業の大きなマーケティングの中でどのようなアプローチをするのか。
- 情報の流通をどうするのかが情報学の最先端だけど、日本では研究している人がいない。
> 国内議論が足りてないのではないか。専門的なことを言える人が少ない。
- これまで誤魔化してラップで包んで済ませていたものがバラバラに出てきてしまい、個別の対応と新たなまとめ方が必要になっている。
- 電子になって紙が減ったときに本の良さはどこなのか、書き手がどう思うのか。
- 大学教員の研究性自体が危ういものになっている。
- 書き手の価値をもう一度どのように整理し直すのか
- 読者自体が変わってきている。ここを明らかにしないと指針を決められない。
- 欧米モデルと違うのは中間読者層を維持してきたということ。
> 今後その層をどのように理解・対応していくのか。 - 電子書籍をどんな相手に向けて作っていくのか。
- 従来の形を出版社が続けるのは厳しい、そもそも何が専門出版なのかも怪しい(笑)
- パブリッシングという言葉だけだとラインとか文字媒体を扱うものも含められる。
- 専門書とか専門コンテンツってなんだ、、、?を再考する機会
- これらの専門性を誰が保証するのかもわからなくなってきている。
- 大学教科書で儲けている流れが崩れたら専門出版のお金儲けの体系は完全に崩れる。新たな金銭の構造をどのように作っていくのか。
聴講者からの質疑応答、意見交換
- ファクティバ(会員制ビジネスデータベース)のシステムが参考になるのではないか。出版社側がルールを作って消費者と接している。
- Editが参考になる、rslロボットテキストに許諾以外のサブスクを提案できるシステム
- 価値のアルゴリズムを出版社側が考える、価値のコントロールと創造性を行う。
- 「AI世代の電子書籍取次」の仕組みを考える。
- 一般の人にも今回の内容を啓蒙すべきではないか?
- 採算を度外視して守ってきたものが、守られなくなってきた。
- 今のままでは図書館は紙の本でないと専門図書への裾野がなくなる。
- 公共図書館も電子への裾野を広げないといけないかなと考えている最中
> 出版の人たちと協力して考えなければならない。
